こちらの記事では、電子印鑑の効力やセキュリティ、さらに無料で作成する方法などを詳しく解説しています。
インターネットで電子印鑑の作り方を検索すると様々なフリーソフトが出てきますね。記事の中盤ではおすすめのフリーソフトも紹介しています。
しかし、手軽に作成できる電子印鑑はセキュリティが心配。 記事の後半ではセキュリティを重視した有料サービスも紹介しているため、興味のある方は参考にしてみてくださいね。
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パソコン上で簡単に押印できることから注目を集めている「電子印鑑」。法人では電子契約を導入しますが、個人での利用に電子印鑑を検討されている方も多いでしょう。普段電子印鑑を使用している筆者が、電子印鑑について徹底解説します。電子印鑑を販売している企業へのインタビュー経験あり。
【目次】
デジタルとアナログの中間?電子印鑑とは
日本に古来から根付く印鑑の文化。実印、銀行印、認印など用途に応じて使い分けるために複数の印鑑を所持している方も少なくないはず。
インターネットやネットショッピング、政府によるキャッシュレス推進…。 様々なモノが電子化していきますが、そんな現代であっても古くからの印鑑文化は変わらず定着しています。 しかし、今まさに日本のハンコ文化は変貌を遂げようとしている最中なのです。
”自民党は7日、行政手続きの100%オンライン化を目指す「デジタル手続法案」を部会で了承しました。法案には当初、法人を設立する際に必要な印鑑の届け出の義務化をなくす案が盛り込まれていましたが、印鑑業界の反発などを受けて見送られました。”
出典:テレビ東京
”2019年中の国会審議を目標にしていた会社登記の「印鑑レス化」が、6月26日まで開かれている通常国会に提出されない見通しであることが分かった。”
出典:ハフポスト日本版
“デジタル法案”骨抜きに? 印鑑業界が反発 https://t.co/o7FSYv6Cbm 既得権益に配慮してデジタル化が遅れることは賛同しかねます。判子業界身を守りたいなら、むしろ自らが能動的に電子印鑑に参入するべきと思います。
— もりしー@ポジティブを考えるエンジニア (@kazuki_morisy) 2019年3月8日
上記のように、各方面・メディアで様々な議論が交わされています。
そもそも電子印鑑ってどんなもの?
古くから日本では、契約書などの書類に印鑑を押すことで本人がその内容を認めたことを表してきました。現代社会では様々なものが電子化しているほか、ペーパーレス化も進んでいます。 ペーパーレス化には紙媒体で保存するコストがかからなくなったり、保管スペースが不要になったりと様々なメリットがあります。
しかし、ペーパーレス化が進んでいる現代でも紙の書類に印鑑を押す場面は少なくありません。 そんなペーパーレス化という時代の流れに順応するために生まれたのが電子印鑑です。
電子印鑑についてわかりやすく説明するならば、「紙に押印する作業をパソコン上で行う」という表現がイメージしやすいのではないでしょうか。
仮に電子印鑑を使用しないとすると、ある書類に押印して相手へ送信する際、次の4つの作業が必要となります。
- パソコンで書類を作成
- 作成した書類をプリント
- 印鑑を押す
- 押印後の書類をスキャン
一方、電子印鑑を使えば上記2〜3の作業を省略でき、書類を作成した時点ですぐに押印を行うことが可能です。 いかがですか。電子印鑑の利便性をグッと身近に感じられるはずです。
法人が請求書などに使う社印(角印)も電子印鑑にできる
請求書や領収書など、法人であれば社印(角印)を使用するケースは多いですよね。 結論から言うと、電子印鑑は社印(角印)であっても作成可能です。
そもそも電子印鑑を使用する際、なにか役所などの行政機関へ特別な届け出をしなければならないことはありません。 そのため、社印(角印)であっても個人用と変わらず電子印鑑にすることができるんです。
ただし注意したいのは、法人の経営者が持っている代表者印を電子印鑑にすることにはセキュリティにおける脆弱性がある点です。
次の項目では、電子印鑑の効力やセキュリティにまつわる内容を紹介します。
現状の効力は認印程度 重要な契約は手押しが多い
冒頭でも申し上げた通り、電子印鑑の文化はまだまだ発展途上にあります。 印鑑文化が日本独特のものであり、海外に電子印鑑のモデルがないことも発展が遅れている理由なのかもしれません。 いずれにせよ、現状では電子印鑑の効力はかなり限定されてしまっています。
なにも、「重要な契約は実際の紙に押印しなければならない」という法律が定められているわけではありません。 (ただし、電子書類として保存する場合には法律で規定があるケースもあります。)
しかし、実際の現場では不動産売買をはじめとする各種契約書については、実際の紙に押印する機会がほとんど。 「実印の押印が電子印鑑でOK」というケースはなかなか見かけません。これは、今でも日本に印鑑の文化が深く根付いている証拠です。
PDFへの認印は積極的に活用されている
それでは電子印鑑は日本に全く浸透していないのかというと、そんなことはありません。 むしろ、電子印鑑自体はビジネスなどにおいて積極的に利用されています。例えば請求書や納品書、領収書などをPDF形式で取引先へ送付する際や、社内確認のためのPDF書類に同意する際などには電子印鑑が活用されています。
これらは実印や銀行印とは意味合いが違い、どちらかといえば認印の性質を持っているハンコです。
つまり、現状の日本では「電子印鑑の効力は認印程度である」と暗黙の共通認識となってしまっているんですね。 もちろん今後はこの状況が変わり、実印や銀行印も電子印鑑として効力を果たすようになる可能性は大いにあります。
※新型ウイルスの影響により、電子印鑑に対するニーズが高まっています。 電子印鑑の法的効力に関しては、以下の最新ページもご覧ください。
» 電子印鑑に効力はある?
実印や代表社印を電子印鑑にするのはセキュリティに不安が
なぜ現状では認印程度にしか電子印鑑が使われていないかというと、「セキュリティに対策された電子印鑑が普及していない」という理由が挙げられます。 それゆえに、実印のような効力が生まれていないのです。もちろんセキュリティにも対策がされた電子印鑑を提供しているサービスは存在しています。 しかし、ほとんどの方が使用しているのはセキュリティに不安の残る方法で作成された電子印鑑。
というのも、認印として使用するための電子印鑑はパソコンがあれば非常に簡単に作成することができるんです。
具体的な例を挙げると、「本物の印鑑の印影を自分でスキャンして画像化する」「オンラインのフリーソフトで作成する」など。
これらの方法で作成する電子印鑑は手軽ですが、セキュリティの脆弱性には問題があります。 なぜなら、ただ単に画像化しただけの印影は簡単に複製して悪用されてしまいますし、オンラインのフリーソフトで作成される電子印鑑の印影には独自性はないからです。
もしきちんとセキュリティ対策をした電子印鑑を作成するのであれば、後述するシャチハタ株式会社のサービスを利用しましょう。 少し作成の手間はかかりますが、セキュアや個人認証ができるためセキュリティ面での心配はありません。
仮にセキュリティへの対策が万全な電子印鑑が普及してきたら、電子印鑑の効力はより強まってくることでしょう。
フリーソフトで作成できる?それぞれのソフトの特徴を解説
すでに申し上げた通り、電子印鑑はフリーソフトで簡単に作成することが可能です。 こちらの項目では、代表的なフリーソフトでの印鑑作成方法を紹介します。
白舟書体 Web認印
最初に紹介するサービスは「Web認印」です。会員登録不要なので、誰でも手軽に認印の電子印鑑を作成可能。 ソフトをダウンロードしなくてもオンライン上で電子印鑑を作れるので、非常に手軽で便利です。
Web認印は、フォント制作や印鑑・ゴム印の製造と販売、印章事務用品の販売などを行う株式会社白舟書体が提供するサービス。 デザインは選べませんが、とにかく手軽に利用できるのは魅力です。
Web認印で電子印鑑を作成する方法は、サイト内の「名字」というウインドウへを名字を入力し、次のページで作成された電子印鑑の画像を保存するだけ。表示された画像を右クリックで保存すれば完了です。
日本で多い名字を上位10,000位まで用意してくれていますが、表示されない名字の場合は利用することができません。 なお、作成される画像は透過ではないため、透過画像にしたければ自分で加工する必要があります。
白舟書体 Web認印はこちら(公式サイト)
クリックスタンパー
クリックスタンパーは、スタンプ風ベクター画像を簡単に作れるフリーソフトです。用意されたサンプルをもとにして、色々な電子印鑑を作成できます。
三文判はもちろん、マル秘や回覧印など様々なスタンプを出力できるのが利用しやすいポイント。
通常の丸印はもちろん、社印のために使用する角印や複数行の電子印鑑なども作成可能です。ただし注意したいのは、デザイン面での自由度は低い点。
解像度や縦と横のサイズ調整などは可能ですが、豊富なデザイン…とは言えません。
クリックスタンパーはこちら(窓の杜)
クリップスタンプ
クリップスタンプは、ワードやエクセルなどの文書に三文判・日付印などの電子印鑑を押せるフリーソフトです。
様々な電子印鑑を使用でき、通常の電子印鑑に加えて下部分に「代」という代理人を表す文字が記されているものもあります。さらに、角印にも対応可能。
日付印・代理印の電子印鑑は正円を3行に分けたものが使用でき、名前と日付だけでなく、部署名まで記載できます。 部署名・名前は半角23文字まで入力可能であり、半角スラッシュ(/)を入力すれば改行もできます。
日付はパソコンから自動で読み込んでくれるほか、好きな日付を指定することも可能です。 このように、ワードやエクセルなどを使っている企業にとっては使い勝手のいいフリーソフトとなっています。
クリップスタンプはこちら(窓の杜)
パパッと電子印鑑Free
パパッと電子印鑑Freeは、全部で4種類の電子印鑑を作成できるフリーソフトです。作成可能な電子印鑑は以下をご覧ください。
認印/三文判(丸型または小判形)
文字サイズや枠線の幅、色はもちろん文字のかすれも調節可能データネーム印(日付付き)
社内の承認印などを作成でき、日付位置や表記方法を変更できます。日付についてはWindowsの日付を自動で読み取ってくれるため、自分で修正する手間がありません。ビジネス印(角印)
納品書や請求書などに使用する社印(角印)を作成できます。ユーザー印(任意のスタンプを作成)
「極秘」「重要」など任意のスタンプを作成できます。また、パパッと電子印鑑Freeには電子印鑑の作成をサポートするいくつかの機能が搭載されています。 例えば「詳細編集機能」では作った電子印鑑の形を微調整するなどのより精密な編集を実施可能です。
そして、「印鑑パネル機能」は、デスクトップ上の好きな位置に小さい印鑑パネルを表示する機能。 印鑑パネルからはドラッグ&ドロップでスピーディーに電子印鑑を押印できます。
ちなみに、フリーソフトであるパパッと電子印鑑Freeには有料の製品版が存在しています。 製品版へアップグレードすると作成できる電子印鑑が増えるほか、印鑑用のフォントも10種類が付いてきます。
パパッと電子印鑑Freeはこちら(ベクター)
エクセル電子印鑑のアドインは角印も使えて便利
次に紹介するのは、エクセルシートへ様々なハンコを押印できるアドイン「エクセル電子印鑑」です。
エクセル電子印鑑はフリーソフトなので、窓の杜などから無料でダウンロードすることが可能。 こちらを使用すれば、セルの右クリックからスピーディーに電子印鑑を押印できます。使用可能なハンコの種類は以下のもの。
- 認印(丸型または小判形)
- 角印(角型)
- データネーム印(日付付き)
- ビジネス印(重要や社外秘など)
- ユーザー印(オリジナルのハンコを使える)
エクセル電子印鑑の設定画面では、プレビュー機能で印影を確認しつつ色やサイズ、フォントなどを調節できます。 本物の印鑑ほどデザイン性が高いわけではありませんが、社内で承認印として使用する分にはこれで十分でしょう。
エクセル電子印鑑の使い方
次に、エクセル電子印鑑の使い方を紹介します。まずは窓の杜やベクターからソフトをダウンロードし、お使いのパソコンへインストールします。エクセル電子印鑑のダウンロード(窓の杜)
エクセル電子印鑑のダウンロード(ベクター)
インストールが完了したら、どのセルでも構いませんので右クリックをします。 そうすると「エクセル電子印鑑」のメニューが出てきますので、「印鑑設定」をクリックして初期設定を行います。
自分のハンコを作成したら、あとは「右クリック⇒エクセル電子印鑑」から押印したいハンコをクリックすればOK 。 いつでも好きな場所に電子印鑑を押印することができます。
セキュリティ重視なら個人認証対応のシャチハタ「パソコン決裁」
さて、こちらの項目ではシャチハタ株式会社が提供する「パソコン決裁」(※有料) について詳しく紹介します。
シャチハタ株式会社は、誰もが一度は使った経験があるであろう朱肉不要の印鑑、通称「シャチハタ」を製造している会社 。 シャチハタという名称で商標登録 も行われています。
これまでにはフリーソフトで電子印鑑を作成する方法を紹介しましたが、フリーソフトで作成した電子印鑑はセキュリティ面には不安が残ります。 間違っても、重要な書類へフリーソフトで作った電子印鑑を押印しないようにしましょう。
もしセキュリティを重視して電子印鑑を作成したいのであれば、間違いなくシャチハタ株式会社のパソコン決裁を利用すべきです。 まずはその理由をお伝えします。
セキュア&個人認証が可能
シャチハタ株式会社が提供するパソコン決裁で作成する電子印鑑は、セキュア&個人認証が可能 となっています。 これにより電子印鑑の改ざん・複製などの悪用を防ぐ ことができ、捺印後に改ざんされてしまう心配もありません。また、複製を防ぐため、電子印鑑のデータにはシリアル番号 が備わっています。 さらに、使用時には認証を経てからの押印となるため、他の人に自分の印鑑を無断使用されてしまう心配もありません。
オーダーメイドだから安心
パソコン決裁のサービスでは、申し込みを受けてから1つずつオーダーメイドの電子印鑑が作られています。 先ほどお伝えしたように、電子印鑑のデータにはシリアル番号が備わっているので、同じ名字であっても誰の電子印鑑か識別が可能。また、シャチハタ株式会社のパソコン決裁で作成する電子印鑑は、本物の印鑑と印面が同じ であるという特徴があります。
そのため、使い方によっては認印以上の効力を付与することも可能。 もちろんセキュリティには万全が期されているため、不安を感じることはありません。
パソコン決裁で電子印鑑を作成する流れ
それでは最後に、パソコン決裁で電子印鑑を作成するための流れを紹介します。必要なのは「ソフトウェアパック」と「印鑑データパック」 という2つの製品。 どちらか1つだけでは電子印鑑が作れない ので、両方を購入する必要があります。これら2つを手に入れたら、「パソコン決裁カスタマーサイト」 から印鑑データパックのシリアルナンバーや印面の情報などを入力し、電子印鑑の作成を申し込みます。 その後1〜2週間で電子印鑑が作成され、完了通知メールが届いたら印鑑データをダウンロードします。
印鑑データをダウンロードしたら、電子印鑑を導入したいパソコンへパソコン決裁のソフトをインストールします。 最後にパソコン決裁のソフトへダウンロードした印鑑データを読み込めば、作成は完了です。
まとめ
いかがでしたか。電子印鑑に関する内容を徹底的に解説しました。 電子印鑑を使えば、書類を印刷して押印し、スキャンしてパソコンに取り込むという一連の作業を省略して業務効率化を図れます。さらに、使用するソフトによってはワードやエクセルと連動している ものもあるので、これらのツールを使用している方にはとても使い勝手がいいでしょう。 電子印鑑は非常に便利なため、押印する機会のある方はぜひ導入してみてくださいね。
現在はセキュリティ対策の行われた電子印鑑がそれほど普及しておらず、重要な書類については今でも紙へ押印する場面が多いですよね。
しかし今後、万全なセキュリティの電子印鑑が普及すれば、もっと電子印鑑の効力が強まってくる 可能性はあるでしょう。
電子印鑑を作成する方法には無料のものと有料のものがあります。 簡易的な認印を作成したい方ならフリーソフトで十分ですし、セキュリティを重視したい方なら有料サービスを利用すべき。 ぜひご自分に最適な電子印鑑を作成してくださいね。