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電子印鑑が便利だって聞いたけど、普通の印鑑と同じように効力はあるんだろうか?」と疑問を抱えてはいませんか? これからのビジネスシーンで避けては通れない存在、それが電子印鑑です。

この記事では電子印鑑に効力はあるのか解説しているほか、将来的に効力を持つ日はくるのか、など印鑑の電子化に関する事情を徹底解説しています。

ビジネスマンがこれからの時代の流れを知るためには、効力の有無をはじめとして、電子印鑑に関する総合的な知識が必要です。 ぜひ最後までご覧ください。

この記事を書いた人
樽見 章寛
樽見 章寛(たるみ あきひろ) 実印.net 編集部
パソコン上で簡単に押印できることから注目を集めている「電子印鑑」。法人では電子契約を導入しますが、個人での利用に電子印鑑を検討されている方も多いでしょう。普段電子印鑑を使用している筆者が、電子印鑑について徹底解説します。電子印鑑を販売している企業へのインタビュー経験あり。




電子印鑑に法的な効力はないが、多くの企業が導入済

ビル群

結論から申し上げると、現在の電子印鑑に法的効力はありません。その理由は、電子印鑑が使えるのは認印だけだからです。

※クラウドサインなどの電子契約サービス上で使用する電子印鑑は、法的効力を持つのでご安心ください。

印鑑には大きく分けて実印・銀行印・認印の3種類があります。 登記の際に届け出た法的効力のある印鑑が法人実印で、法人口座の開設時に登録するのが法人銀行印です。

法的効力のある法人実印や、法人銀行印には電子印鑑が使用できないので、実務で使用できるのは「認印のみ」ということになります。

種類 概要 電子印鑑の使用可否
実印 登記の際に届け出る代表者印 ×
銀行印 法人口座の開設時に登録する印鑑 ×
認印 日常的な取引や契約に使用する印鑑

契約書に捺印する印鑑は効力がありそうなもの。 しかし厳密には、印鑑があってもなくても、両者が合意していれば契約としての効力はあるので、そもそも契約書にハンコを押すこと自体に法的な効力はないのです(もちろん、合意の証明としては有効です)。

このことから、法的効力という意味では、電子印鑑に大きな力があるわけではありません。 しかし、法的効力がないからといって「じゃあ電子印鑑なんて必要ないのか」と考えるのはお待ちください。

効力は弱くても、実際に電子印鑑を多くの企業が導入している事実があります。


多くの企業が電子印鑑を導入する理由

多くの企業が電子印鑑を導入している理由は、ズバリ次の2つです。

  • 業務効率化になるから
  • コスト削減になるから

取引先と電子メールでやり取りする際、請求書などの書類をプリントアウトして印鑑を押し、それをスキャンしてメールで送るのは効率が悪いですよね。 電子メールで送る書類であれば、印影をスタンプする作業もパソコン上でできる方が便利でおすすめです。

業務効率化は人件費の削減につながりますし、わざわざ捺印のために書類を印刷するコストも削減できます。 こういった理由から、法的効力がなくても電子印鑑を導入する企業が増えているんです。

特に、会社を運営していくための基本的な規則をまとめる「定款」の作成時に電子印鑑が活躍しています。 最近ではコスト削減のために電子定款を選択する会社が増えており、その際に電子印鑑を使用する形です。



GMOインターネットグループは印鑑を“完全廃止”宣言

GMOインターネットグループ
電子印鑑の効力を知るために、最近の注目すべきニュースがあります。それは、GMOインターネットグループの印鑑“完全廃止”宣言です。

2020年の新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、自宅で勤務する「テレワーク」が多くの企業で導入されています。 しかし、テレワークの問題点として「電子印鑑が認められていないため、印鑑を押印するために出社する社員もいる」ことが挙げられていました。

強い効力があるわけでもないのに、「電子印鑑ではなく実物のハンコを押すのが慣習」という理由だけで、テレワークの社員を出社させるのは合理的ではありません。

GMOインターネットグループはこの問題を解消するため、2020年4月17日に効力の有無に関わらず印鑑による手続きを廃止し、電子印鑑へ移行する意思決定を行いました。以下がその原文です。

在宅勤務期間中に、グループ内でのアンケートを実施し、捺印手続きのために出社しなければならない事態が多いことを確認したため、2020年4月17日にグループ内での印鑑手続きの完全廃止を意思決定致しました。
(※監督省庁、金融機関への提出書類等において捺印を必要とする場合を除く。)

出典:GMOインターネットグループ

またグループ代表の熊谷氏は、電子印鑑やその効力について、Twitterで次のように投稿しています。


「監督省庁への提出書類など必要最低限の印鑑は残す」としていますが、GMOインターネットグループは効力の有無に関わらず、ほぼ全ての印鑑手続きを電子印鑑へ移行する考えです。

GMOほどの大企業が電子印鑑への移行をここまで宣言するのですから、法的効力はなくとも、印鑑の電子化はより加速していくことでしょう。 また、電子印鑑の効力も強まってくるのではないでしょうか。



電子印鑑の問題点

悩みを抱えるビジネスマン

先述のとおり電子印鑑の効力はより強まっていくと考えられますが、依然としてセキュリティなどに関していくつかの問題点があります。


本人が捺印したのか証明しづらい

電子印鑑が強い効力を持っていない理由として、本人が捺印したものと証明しづらい点が挙げられます。

例えば取引先の重役の電子印鑑が捺印されていたとして、それを本当に本人が捺印したのか証明して効力を持たせるためには、特殊な環境が必要となります。

その特殊な環境が整っていない会社だと、電子印鑑に効力を持たせるのは難しいのです。


法整備がされていない

2005年に施行された「e-文書法」では、契約書をはじめとする様々な書類の電子化が認められています。 簡単に言えば紙媒体に保存しなくても、データとしてきちんと効力のある契約書を作れるということです。

しかしe-文書法をはじめとする様々な法律では、電子印鑑に関する取り決めは制定されていないのが現状です。


無料で簡単に作れるから

電子印鑑にも様々な種類があり、効力の弱い簡易的な電子印鑑であれば、無料で簡単に作ることが可能です。 エクセルや各種フリーツールなどを使用すれば、画像やPDF形式など自分で電子印鑑を作成できます。

しかし無料で簡単に作れるからこそ、効力が弱いとみなされるのも事実なのです。



将来的に効力を持つ日は来るのか

オフィス

電子印鑑に大きな効力はないとお伝えしました。将来的に電子印鑑が効力を持つ日は来るのでしょうか。 電子印鑑の流れを踏まえて、考察してみましょう。


技術的には可能

電子印鑑に効力を持たせることは、技術的にはすでに可能です。 例えば、いつ誰が捺印したのかを示す認証技術は、現在でもすでに活用されています。 認証技術を導入している代表的な電子印鑑の例を挙げると、次のとおりです。

  • シャチハタ「パソコン決裁Cloud」
  • GMO「電子印鑑GMOサイン」

こういった認証技術の搭載された電子印鑑であれば、本人の捺印を証明でき、偽造防止にも役立つので、十分に効力を発揮できることでしょう。

しかし認証技術の搭載された電子印鑑は有料サービスなので、日本中の企業や役所などが全てそのシステムを導入するのは現実的ではありません。 だからこそ、今現在は電子印鑑の効力が弱いとされているのです。


政府は印鑑制度の廃止を試みている?

過去には法人登記の際の印鑑を廃止する「デジタル手続き法案」が検討されたこともありました。 しかし、印鑑の法的効力をなくそうとするこの法案は一部否決され、ひとまず登記時の印鑑は無くならないことになりました。

それでも、テレワークが広がる昨今に政府は印鑑の廃止を考えているようで、この流れからすると電子印鑑の効力が強まる前に、印鑑制度自体が廃れていく可能性もあります。


ネット銀行はすでに個人の銀行印が不要のところも

「楽天銀行」や「セブン銀行」など、銀行としての店舗を持たないネット銀行が広まりつつあります。 ネット銀行の多くはすでに個人の銀行印を効力がないとして不要にしており、印鑑文化の衰退を感じさせます。

ただしネット銀行でも「法人口座の場合は印鑑が必要」としているところは多く、まだ完全に印鑑レス化が進んでいるわけではありません。 やはり印鑑は効力の有無というよりも、社会習慣と捉えるべきでしょう。



まとめ:印鑑文化が消えない限り、印鑑の電子化は加速していく

この記事では、「電子印鑑には効力があるのか」など、印鑑の電子化に関する情報をまとめました。 現時点で電子印鑑に強い効力はありませんが、実際に導入している企業はたくさんあります。

電子印鑑は日本独自の印鑑文化が根底にあるからこそ生まれた存在です。 これからも印鑑の文化が残り続ける限り、電子印鑑はさらに発達し、今以上の効力を持つようになるでしょう。

一方、日本の印鑑文化が衰退していくようであれば、電子印鑑の必要性もなくなるため、電子印鑑の効力も同じように減衰していくのかもしれません。

いずれにしても、今現在の日本において印鑑はまだまだ欠かせない存在なので、近い未来では電子印鑑の効力は増していくと考えて問題ないでしょう。