電子契約の導入をお考えではありませんか?近年の社会状況も背景にあり、オンライン契約を選択する企業の数は急激に増えています。
こちらの記事では、電子契約を利用している企業の比率や導入方法、必要なコストなどに関する情報をまとめています。
また、電子契約を導入する際のよくある課題・注意点や、それを解消する方法も紹介。 最後までお読みいただければ、電子契約の導入に関わる情報を詳しく理解できるでしょう。 オンライン契約を開始するガイドブックとして、ぜひ参考にしてください。
この記事を書いた人
DX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されている昨今、電子契約の導入を検討されている企業も多いのではないでしょうか?電子契約サービス29社を徹底比較した筆者が、みなさまの円滑な電子契約導入をサポートいたします。顧問弁護士による記事のリーガルチェックも経験済み。
【目次】
電子契約の国内での利用状況・導入率
日本国内で電子契約の導入率はどれくらいなのでしょうか。 JIPDECによる調査(2018年1月)によると、当時の導入率は43.1%という結果が出ています。
2018年の時点でもある程度の利用率であったことから、2023年現在ではより活用している企業数は増加していると考えられます。
実際、電子契約大手の「クラウドサイン」の利用企業数の推移を見ると、電子契約の導入が急速に進んでいる実態が確認できます。 クラウドサインの利用企業数の推移は次の通りです。
- 2015年10月:サービス開始
- 2017年8月:1万社を突破
- 2018年3月:3万社を突破
- 2019年7月:5万社を突破
- 2020年4月:8万社を突破
- 2020年8月:10万社を突破
特に2020年に入ってからは、テレワーク需要の急増も相まって目覚ましい増加率となっています。 2019年7月からの1年間でクラウドサインの導入企業数が倍増していることからも、電子契約は2020年で急激に導入が進んだと判断できます。
大手導入企業の例
電子契約は誰もが知っているような大手企業でも導入されています。 業界No.1のシェアを誇るクラウドサインの導入事例を見てみましょう。- みずほ証券
- 野村證券
- 東京海上日動
- クレディセゾン
- ぐるなび
- TamaHome
- ブリヂストン
- トヨタ自動車
- JTB
このようにそうそうたる有名企業が電子契約を導入している現状があります。 規模が大きい企業ほど電子契約によるコスト削減や業務効率化の恩恵を受けやすいため、大企業が電子契約を導入するのは自然な流れでしょう。
電子契約の導入方法と必要なコスト
電子契約を導入する方法は、専用の電子契約サービスを導入するのが一般的。 自社で電子証明書を発行して導入する方法もありますが、多少のITに関する知識が必要になるので、電子契約サービスを導入する方が手間も労力も少なくて簡単です。
電子契約サービスを導入して利用するコストは、中小企業の場合で年間およそ5万円〜20万円くらいが相場でしょう。 ただし実際の費用は選ぶサービス・プランや機能、契約数やユーザー数によっても変わってくるので、あくまで目安としてお考えください。
電子契約を導入するとどれくらいのコストが必要なのかを知るために、以下の電子契約サービス大手4社の料金プランを比較してみましょう。
- クラウドサイン
- 電子印鑑GMOサイン
- DocuSign
- Adobe Sign
※表記価格は税込
サービス名 | クラウドサイン | 電子印鑑GMOサイン | DocuSign | Adobe Sign | |
---|---|---|---|---|---|
プラン名 | Standard | Standard Plus | 契約印&実印プラン | 電子署名プラン(Standard) ※月額プランの場合 |
Adobe Sign小規模企業版 |
月額基本料金 | 11,000円 | 22,000円 | 9,680円 | $40/1ユーザー | 4,270円/1ユーザー |
送信1件ごとの費用 | 220円 | 220円 | 電子署名:110円 高度電子署名:330円 |
無料 | 無料 |
電子契約サービスの料金システム
電子契約サービスの料金体系や課金システムはサービスによって変わってきます。 先ほど比較した4社の場合、クラウドサインと電子印鑑GMOサインは月額基本料金と契約締結ごとの従量料金で費用が決定されます。一方、DocuSignとAdobe Signの場合はユーザー人数に応じた課金システムです。 導入するユーザー数が増えるほど必要な費用は増えますが、契約締結ごとの従量料金は設定されていません。
なお電子契約を導入する際には料金体系だけで比較をするのではなく、「自社にはどの機能が必要なのか」を見極め、最適なサービスを選んで導入するのがおすすめです。
初期段階のよくある課題・注意点と対処法
これまでは紙と印鑑での契約が一般的だったのに、急に電子契約へ移行するとなると問題や障壁も生じてきます。 こちらでは電子契約を導入する際に起こりやすい課題や注意点を紹介し、どうすれば解消できるのか対処法をお伝えします。
電子化できない契約書もある
様々な書類の電子化が進められている現代でも、いまだに法律や条例で電子化が認められていない文書は存在しています。 電子化できない代表的な契約書の例としては、次のものが挙げられます。- 重要事項説明書
- 定期借地契約書
- 定期建物賃貸借契約書
- マンション管理業務委託契約書
- クーリングオフの書面
特に不動産業界は、生涯を通した大きな買い物をする機会もあることから、まだ電子化が認められていない書類も多くあります。 残念ながら法律や条例を無視するわけにはいきませんので、今後の法整備を待つしか対処法はありません。
電子契約の導入を検討している方は、自分の業界ではどのような文書が電子化できないのか、導入前にサービス運営会社へ問い合わせてみるといいでしょう。
ただし、電子化できない書類は一部だけなので、どの業界でも電子契約を活用できる機会は多いでしょう。 全ての契約を電子化できなくても電子契約を導入すれば印紙税を大きく削減できる場合もあるので、まずは導入してみることをおすすめします。
取引先の理解と同意を得る必要がある
電子契約を導入する際の問題点となりやすいのが、取引先の理解を得られるかどうかです。 自社だけが電子契約の導入を行っても、取引相手が同意してくれなければ従来通り紙と印鑑による作り方しか選択肢はありません。しかし記事の前半でお伝えした通り、最近では電子契約の導入企業数は増加傾向にあります。 テレワークを導入する企業も増えていますので、昔と比べれば電子契約を断られる可能性は低くなっているでしょう。
また、このデメリットを解消するためには知名度の高い電子契約サービスを導入するのがおすすめ。 クラウドサインや電子印鑑GMOサインなどの著名な電子契約サービスを導入していれば、取引先の同意も比較的得やすくなるのではないでしょうか。
社内ルールの再整備と社員教育が必要
電子契約を導入して紙と印鑑の契約から切り替える際は、社内ルールの再整備が必要となります。 契約業務のワークフローも紙と印鑑の時とは異なる流れになるので、そちらも電子契約導入時に見直さなければなりません。また、社員の電子契約に関する理解を深めるために、社内研修など教育をしなければならない点も電子契約を導入する際のハードルの1つです。
電子契約サービスにはオプションで社内研修を代行してくれるところもあるので、そういったサービスを検討するのもいいでしょう。
そのほか内部統制に強い電子契約サービスを選ぶことも重要です。 電子契約は内部統制ができていないと無権代理のリスクも大きくなるため、厳格な管理機能のある電子契約サービスを選ぶといいでしょう。
オンライン契約を導入する手順と流れ
電子契約を導入する手順はそれほど複雑ではありません。 基本的には電子契約サービスを導入すればすぐにでも電子上での契約が結べるようになるのですが、その前にどのサービスを利用するのか考える必要があります。
これから電子契約を開始する企業や個人事業主は、次のような手順で導入を進めていくといいでしょう。
- 自社の課題を洗い出す
- ニーズに応じて最適な電子契約サービスを選択
- 社内ルールの整備と社員教育を実施
- オンライン契約の利用開始
オンライン契約でどのような効果を得たいのか考え、それに合わせて必要なサービスを利用する流れです。 そして、本格的に電子契約を開始する前には社内ルールの整備や教育を行い、できるだけ問題が起きないように導入を進める必要があります。
おすすめの電子契約サービス3選
最後に、法人や個人事業主が導入するのにおすすめの電子契約サービスを3つ紹介します。 いずれも信頼感のあるサービスであり、セキュリティ面も安心して導入できます。 電子契約の導入を考えている方は、ぜひ検討対象に加えてくださいね。
電子印鑑GMOサイン
電子印鑑GMOサインは、様々なインターネットサービスを提供するGMOグループが提供する電子契約サービスです。 電子署名タイプの電子契約サービスではNo.1の導入社数を誇り、その知名度の高さは業界でトップクラス。
多くのメリットがありますが、ここでは2つGMOサインのメリットを紹介します。
- 当事者型と立会人型、両方のタイプが使用可能
- 月額基本料金と1件あたりの送信料が共にクラウドサインの料金よりも安い
信頼・実績のある電子契約サービスで、さらに他社と比べて費用を抑えたい、という企業様は電子印鑑GMOサインをおすすめします。
クラウドサイン
クラウドサインは、業界No.1の導入数を誇る電子契約サービスです。 「弁護士ドットコム」が運営しているため導入サービスとしての信頼感も問題ありません。 クラウドサインの特徴は、知名度の高さとUIの使いやすさです。
「電子契約を初めて導入する方でも直感的に使える」と評判であり、パソコン操作に不慣れな方が多い企業であっても導入しやすいでしょう。 また、知名度が高いからこそ取引先の同意も得やすいと考えられます。
WAN-Sign
WAN-Signは、株式会社ワンビシアーカイブズが運営する電子契約サービス。 日本通運が100%出資している会社であり、運営元としての信頼感も心配ありません。
WAN-Signは電子印鑑GMOサインを基盤に作られたサービスであり、GMOサインにプラスして独自機能の付いた内容となっています。 特に自社で保管している紙の契約書の電子化を代行してくれるサービスが特徴的で、自社保管の文書も全て電子化して管理できるのが魅力です。
なお、ここまで紹介した3つのサービス以外にも、電子契約システムはたくさん登場しています。 次の記事では、ニーズに応じたおすすめの電子契約サービスをランキング形式で紹介しています。
「もっとたくさんのサービスを比較したい」とお考えの方は、ぜひ以下の記事もご覧ください。
» 自社に最適なサービスがわかる【15社徹底比較】
まずは自社の課題を明確にしよう
この記事では、電子契約の導入率や利用開始のための手順などに関連する情報を集めました。 記事の要点をごく簡単にまとめると、次の通りです。- 電子契約の導入企業数は増加傾向にある
- 中小企業の場合、電子契約サービスのコストは年間5〜20万円が目安
- 導入時には課題もあるが、メリットの方が大きい
オンライン契約を活用すれば印紙税の削減や業務効率化など、とても大きなメリットを得られます。 電子契約の導入を検討している方は、まずは自社にどのような課題があるのかを的確に見極め、その課題を解決するのに最適なサービスを選びましょう。