みんなの電子署名はなぜ無料?【ベクター社の本音】

みんなの電子署名(現:ベクターサイン)の運営会社にインタビュー!【開発秘話も】
  • 最終更新日:2024年9月2日
みんなの電子署名はなぜ無料?【ベクター社の本音】
こんにちは!実印.Netの樽見です。

今回は、「ベクターサイン」(旧:みんなの電子署名)という電子契約サービスを展開している株式会社ベクター様にインタビューさせていただきました。

「みんなの電子署名」は、無料で使える電子契約サービスとして人気でしたが、 同社の「ベクターサイン」にサービスの統合を発表。現在、新規アカウントの登録受付はすでに終了しています。

「ベクターサイン」は、無料トライアル期間があるものの、サービスは基本有料。そのため、無料の電子契約サービスをお探しの方は、以下のページをご覧ください。

無料で使える電子契約サービス6選

インタビューでは、「開発にあたって苦労した点」「なぜ無料なの?」など、「みんなの電子署名」に関する情報を詳しく伺いました。

 ※「みんなの電子署名」は、現在新規アカウント発行を停止しており、ご利用いただけません。

執筆者
樽見 章寛

樽見 章寛

DX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されている昨今、電子契約の導入を検討されている企業も多いのではないでしょうか?電子契約サービス29社を徹底比較した筆者が、みなさまの円滑な電子契約導入をサポートいたします。顧問弁護士による記事のリーガルチェックも経験済み。



ソフトウェアの老舗「Vector(ベクター)社とは?」

樽見

樽見

まずは簡単に御社の紹介をお願いします!

ベクターさま

創業して30年の会社になるので、どの範囲で紹介しましょうかね……色々触れていくとそれだけで1時間かかってしまいそうなので(笑)。

樽見

樽見

簡単にで構いませんよ!(笑)

ベクターさま

それでは、1番有名なところだけ紹介させていただきます。パソコンのフリーウェア・シェアウェアの配布を行っている「Vector」というサイトを運営している会社になります。今の若い方にも、Vectorは少し馴染みがあるかもしれませんね。

最初は雑誌のCD-ROMの配布から始まって、インターネット上でフリーウェアの配布をしてきました。こちらを中心に、ソフトウェアの販売や、その技術を利用して様々な事業を展開。

みんなの電子署名については、今年(2021年)の2月にサービスの開始をさせていただきました。親会社がソフトバンク系の会社でして、JASDAQに上場している会社となっております。
Vector社のホームページ ※Webサイト「Vector」のHP

ベクターさま

……何か他に足した方がいいところとかありますか?(笑)

樽見

樽見

大丈夫です!ありがとうございます!(とても気を使って下さる方だなぁ)

みんなの電子署名開発のきっかけ(契約書が進まない…)

樽見

樽見

みんなの電子署名を開発したきっかけは何ですか?

ベクターさま

去年からの新型コロナウイルスの影響で、弊社もテレワークを導入するにあたり様々な整備をする必要がありました。整備をしていく中ですぐに問題となったのが、契約書であったり、社内承認を必要とする稟議書のような文書

これらのスピードがとにかく遅くなったことが、みんなの電子署名開発のきっかけです。

ベクターさま

捺印担当者や承認担当者の出社に合わせて進めなければならないので、とても時間がかかっていたんです。従来であれば、その場でポンポンとハンコを押せば済んでいたんですけどね。

さらに契約書にいたっては、受け取る・送るという物理的な問題も出てきます。これが、テレワークを導入していく上で問題となっていました。

樽見

樽見

これは多くの企業が悩むあるあるですよね。

ベクターさま

そうですね。そこで、弊社も電子契約サービスを導入しようと、様々なサービスを研究いたしました。そこでわかったのが、大きい会社様を相手にしているサービスが圧倒的に多いということ。

もともと、新型コロナウイルスの影響で一斉にテレワークが広がるということを想定されていないマーケットだと思うんです。そのため、サービスの料金形態が、狭いマーケットに向けたものになっているのではないかと。

もしかすると、もっと多くの方が利用しやすいように、低コストで実現できるのではないかと思ったんです。

みんなの電子署名の料金 ※出典:みんなの電子署名HP

ベクターさま

そこで、すぐに検討し、色々な試算をする中で実際に安くできることがわかってきたんです。弊社が電子契約サービスを始めれば、喜んでくれる会社様が多くなるのではないかと思い、開発に入りました。実は、半年ほどで一度できあがったんです。

樽見

樽見

半年でできたんですか、早いですね!

ベクターさま

そうなんです。その後、グループ会社などにヒアリングを重ねてアップデートしていきました。企業規模により必要な機能や必要な考え方が違いますからね。半年かけてヒアリング → 修正を繰り返し煮詰めていき、今年の2月にローンチできたというわけです。

樽見

樽見

開発に半年、改良に半年かけてローンチに至ったわけですね。開発にあたって苦労した点などはありますか?

ベクターさま

2つあります。1つめは、幅広い利用者のニーズに応えるだけの機能を十分に実装すること

個人様も、承認プロセスが複雑化した大手企業様も利用できる状態とはどういう状態なんだろうかと頭を悩ませました。この2つが両立する実装をしていく必要があったんです。

ベクターさま

そして2つめは、わかりやすい状態を維持すること。多くの方が利用できるように自由度を上げ汎用的にしていくと、却ってわかりにくくなっていくという矛盾が発生するんです。自由度を上げつつわかりやすい状態にするために、現在も修正を加えていて、日々アップデートしています。

今でもまだ、サービスが出来上がった!という感覚はなくて、よりわかりやすい状態を目指しています。そこが1番難しい点ですね。

みんなの電子署名の強み:新しい料金形態

樽見

樽見

なるほど。日々進化しているみんなの電子署名ですが、他社サービスと比較したときの「強みと弱み」ってどんなところになりますか?

ベクターさま

強みでいうと、圧倒的に「価格」だと思います。今までなかった料金形態ですからね。少なくとも私が知っている中では、一般的に普通の機能を企業様が使おうとした場合に無料で使えるサービスは他にないんですよね。

無料というのは、月額の固定費用や導入のための開発費用を必要としないという意味ですね。そういう意味で言うと、みんなの電子署名は無料で使えるので、テスト的に導入がしやすい

みんなの電子署名はユーザー数無制限で基本料金無料

ベクターさま

弊社も、テスト的に他社様のサービスを利用してみようとしたのですが、無料プランではテストにもならなかったんです。社内の承認フローをテストしようと思ったのですが、無料プランでは利用できるユーザー数が限られているので、テストできなかったんです。

そういう点で、みんなの電子署名は最初の1年間フル機能を無料で使えるので、テスト的に使っていただきやすい。導入のしやすさという圧倒的な敷居の低さは、みんなの電子署名の強みですね!

みんなの電子署名の弱み:先行メリットが得られない

樽見

樽見

テストとして使いながら実際に運用もしていけるのは、確かにメリットが大きいですよね。反対に、弱みはどうですか?

ベクターさま

弱みでいうと、先行している会社様には先行メリットがあると思うのですが、それがないところですかね。「契約」で考えた場合、自社でも取引先でもすでに導入済みのサービスがあると、新たなものを導入しようとは考えにくいのかなとは思います。

樽見

樽見

確かに……コストも余計にかかってしまいますからね。

ベクターさま

ただ、みんなの電子署名の場合導入のコストがかからないので、従来のサービスに付随して導入することが可能なんですね。

ですので、例えば「取引先が電子署名を受けづらい」「サービスの仕組みの違いで動かせない」などによって今使っているサービスが浸透していかない場合に、みんなの電子署名であれば無料なので導入しやすいです。

なので、弱みは確かにあるんですけど、その弱みもクリアできるのかなと感じています。他社様のサービスがある中で、みんなの電子署名の評価ってどうなんだろうって思っていましたが、想定していたよりいいペースで使っていただけている感触はありますね!

ベクターさま

余談になってしまいますが、実はコスト面の考え方に「ベクターらしさ」が現れています。ベクターはソフトライブラリでシェアウェアを扱っていることもあって、「とにかく使ってみる。試して気に入ったら、お金を払っていただく」という発想がすんなり出てきたんです。

パッケージソフトを買わないとサービスを試すことすらできない、そういったスタイルではないんですよね。このようなビジネススタイルに対する発想の違いがあったりしますね。

\公式サイトはこちら/

みんなの電子署名

どんな企業規模でも使える?

樽見

樽見

「基本無料で、必要なところだけ課金していただく」。確かに、みんなの電子署名も同じ仕様ですもんね。導入されている企業規模の内訳ってわかりますか?

ベクターさま

弊社の場合、プッシュ型の営業を行って導入していただくということをしていないので、厳密にはわからないんですよね。Webから簡単に申し込めて、すぐに使えるというスタイルを取っているということもありまして。

事前に企業の審査をしたり、申し込みいただいた企業の調査をしないので、企業規模の大小はわからないんです。

樽見

樽見

そうなんですね。

ベクターさま

はい…。ただ、問い合わせいただいた一部の企業様でいいますと、個人様公益社団法人様中小企業様、それからあれ?こんな大企業が?という大手の会社様にもご利用いただいています。ですので、色んな企業規模の会社様にご利用いただいている印象ですね。

樽見

樽見

なるほど、企業規模問わず使えるということですね!

導入理由とおすすめの企業

樽見

樽見

導入企業様はどういった理由でみんなの電子署名を導入されることが多いですか?

ベクターさま

そうですね。これも問い合わせいただいた内容から判断すると、管理コストを下げたいという要望が多いように感じます。下げられるコストを下げたいと思うのは、会社からすると世の常ですからね。

問い合わせいただいた企業様の相談を受けることもあるのですが、「どうすれば費用を安く抑えられるか」という内容が多いです。

こういったところからも、コストを下げたいという企業様が多い印象です。みんなの電子署名は費用がかからないので、まずは試しに使ってみて、結果としてそのまま使い続けてくださる企業様が多いです。

……すみません、色々喋ってますが答えになってますか?(笑)

樽見

樽見

大丈夫です!ご配慮ありがとうございます!どんな企業様に特におすすめですか?

ベクターさま

先ほどと同じ内容になってしまいますが、やはり管理コストを下げたい企業様には特におすすめですね。一度使ってみていただきたいなと思います。あとは、すでに導入しているのに思うように電子化が進んでない企業様にも使ってみていただきたいですね。

取引先から断られていて電子化が進まない場合、みんなの電子署名を使っていただくことで電子化が進むかもしれません。みんなの電子署名は、取引先も無料で使用できますので。

そんな使い方も?【意外な使い方】

樽見

樽見

やはり無料で始められるのは大きいですよね。無料なのに機能が豊富なみんなの電子署名ですが、特に人気のある機能って何かありますか?

ベクターさま

そうですね。社内でもみんなの電子署名を使ってるのですが、ワークフローの設定機能が使いやすいですね。社外も含めた契約だけでなく、稟議のように社内のみで承認を取っていくような文書に対しても使えるんです。

こういった使い方もできるので、ワークフローの設定機能は使いやすいなと感じますね。

樽見

樽見

ワークフロー機能って、他社様ですと高額なオプションになることが多いですもんね。それを無料で利用できるのはすごいですよね。

ベクターさま

ありがとうございます(笑)。自分達もビックリしたんですよね。ある程度の人数を入れ込んでワークフローを回そうとすると、「え、こんなにするの?!」っていう金額が出てきちゃったりするので。

なぜ無料?利益でてます?ビジネスモデルを紐解く!

樽見

樽見

ワークフローのような高機能を揃えているのに、なぜ無料で提供できているんですか?

ベクターさま

弊社もビジネスでやっているので、全て無料というわけではないんです。かかるコストを計算して、十分収益化ができるねという範囲の料金プランにはなっています。

では、皆様からいただく費用は何かというと、1年以上経過した文書の保管料金になります。なぜこのような形になったかというと、先ほどの「ベクターらしさ」と重なりますが、本当に必要な部分からお金を頂戴しようと。間違って送信した文書でお金をいただくわけにはいきません。

※補足:電子契約サービスの中には、送信量に費用がかかることがあります。送信自体にお金がかかるので、誤送信もカウントされることが多いです。

ベクターさま

1年以上保管するということは、必要で重要な文書だと思います。そういった部分のお金を頂戴しようという発想なんです。それで試算をしてみると、ある程度大丈夫そうだねとなったので、基本無料で提供しております。

そうですね。他社様でよくある例ですと、販売代理店を通じて販売していたりするので、関わる人が多くなればなるほどコストはかかりますよね。その分のコストは料金形態に乗ってきますし、負担するのは利用者になってしまう。そのあたりを低く抑えているというのはありますかね。

樽見

樽見

なるほど、様々な企業努力によってコストが抑えられているんですね。先ほど人気の機能を伺いましたが、今後実装していきたい機能はございますか?

ベクターさま

これは、実はかなりあります!まだ公表できない内容ではあるんですが、各社様から要望をいただいているので、要望の高い順に追加実装していく予定です。

新しい機能の追加であったり、今ある機能の改善という意味でもかなりの追加実装をしていく予定ですので、楽しみにしていただければと思います。

樽見

樽見

今後ますますの機能展開に期待ですね!

「みんなの電子署名」公式サイトはこちらから

電子契約サービス普及のポイント

樽見

樽見

導入が少しづつ進んでいる電子契約サービスですが、今以上に広まっていくためのポイントはどこにあると思いますか?

ベクターさま

「電子署名・電子契約」という言葉自体が、ハードルを高くしているという印象があります。わかりづらいですし、なんだそれ?!って思ってしまいますよね(笑)。実際はそんなに難しいものではなく、ある程度の基礎知識で使っていけるものなんです。

ですので、ハードルを下げるためのわかりやすさであったり、コスト面を抑えて誰でも使いやすいようにするというのが大きいところかなと思いますね。

樽見

樽見

わかりやすさと導入コストを抑える…みんなの電子署名が目指している部分ですね。

ベクターさま

そうですね。あと、みんなの電子署名は稟議や取締役会議事録など、契約以外でも様々な局面で使えるんですね。そういった諸々の用途で使えるという啓蒙も必要かなと感じています。

「電子署名」という言葉から、「画面上でサインをする機能だ」というふうに捉えている方も多いんです。「どうやってサインするんですか?」「タブレット使うんですか?」などのお問い合わせってよくいただくんです。

ですので、電子契約や電子署名に対する理解をどうやって進めていくかも必要になってきますね。

こちらはメディア様のご協力も必要になってくるかと思いますので、ぜひ実印.Netさんにもご協力いただければと思います(笑)。

樽見

樽見

かしこまりました(笑)

みんなの電子署名が描く未来と読者のみなさまへ一言

樽見

樽見

御社がみんなの電子署名というサービスを用いて、成し遂げたい世界観ってありますか?

ベクターさま

今は世の中の流れ的にも電子契約サービスを導入し始めていますが、本来であればコスト削減のために投資されるべき分野だと思うんです。書類を持って色んなところに印鑑を取りに行くというのは、正直必要なコストではないですよね。

そういった不必要な人的コストを減らして、人間は人間でしかできない作業に注力する。省力化であったり、人的コストの削減のために、電子契約サービスを使って頂ければいいのではないかと思っています。

あのー……役に立ってもらえればいいと思います(笑)。自分達のサービスなりに思うんですけど、使って便利になりました、使ってコストが下がりましたってなっていただければそれでいいのかなと思っています。

樽見

樽見

「ユーザーの役に立てればいい」この一言に全てが集約されている気がします(笑)。それでは最後に、読者の方に一言いただけますか?

ベクターさま

「電子署名」「電子契約」って聞くと、すごく難しい言葉に聞こえますし、実際本当に突き詰めていくとものすごく難しいんですね。自社で単純に導入しようとすると、ものすごくコストがかかってしまうような場合もある。

それを立会人型のサービスを使うことで、深く考えずに済むようにしておりますので、ぜひ使ってみていただきたいですね

契約絡みのことなので、まるっきり知識なしで使うのは難しいかもしれません。けれども、使う方が考えなくていい部分は我々が考えますというスタンスで作っているので、利用者の方は安心して使っていただければと思います


みんなの電子署名は無料で始められる
最後までお読みいただき、ありがとうございます!いかがでしたか?

みんなの電子署名にも、ベクター社の「とにかく役に立ってもらえればいい」という想いが反映されていることが伝わってきましたね。

当ページをご覧いただき、みんなの電子署名に少しでも興味を持っていただける方がいれば幸いです!気になる方は、公式サイトもチェックしてみてくださいね。

\公式サイトはこちら/

ベクターサイン(旧:みんなの電子署名)

【おまけ】
電子契約サービスを展開されている企業様が、“ハンコ文化”をどう思われているのか聞いてみました!
樽見

樽見

ハンコ文化の今後に関して、どう思いますか?

ベクターさま

ハンコ自体は、当面ゼロにはならないだろうなと思っています。というのも、簡単なんですね、ハンコって。押してあるのが見てすぐわかりますし。ただその反面、それだけ?っていうのもある。

要は、証拠の能力として考えた場合、電子署名の方が圧倒的に強いんですね。改ざんはされないですし、電子署名自体をコピーして偽造することもできない。証拠力の高さでいうと電子署名の方が高いのかなと思っています。

ベクターさま

ただ、ハンコの場合、そこに押されて見えているという安心感がありますよね。年代によっては電子署名を受け入れられるかという問題もありますし、ハンコの方が安心感があるというのは、これから先も残るだろうなと思います。

国が実印を廃止しない限り、ハンコ文化はなくならないだろうと思っていますね。